偽善社総本部。

偽善者・SGXの気まぐれ赤裸々粉塵爆発日記

ナスビ君の超絶平穏日記 第4話 友達

これは謎の生命体ナスビ君が、その異様な見た目から如何に人間社会に溶け込んでるかを描いた物語である。

 


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ナスビ君の超絶平穏日記 第4話

「友達」

 

ナスビ君は朝からせっせと外に干していた洗濯物をしまいこんでいる。

基本服を着ない生物の筈ではあるが、何故かシャツやズボン等もある。

ナスビ君はぐっしょりと濡れてしまった。

汗で濡れた訳ではない、今日は10年に一度の大雨だ。

洗濯物を干していて突然降られたのか?違う。

ナスビ君は大雨が降る中、洗濯物を外に干し、今まさに回収しているところだ。

「10年に一度の大雨で濡れた衣服なんて、高値で売れるに違いないよねー!」

朝7時から意味の分からないことを叫ぶ蛇野郎。

今日、ナスビ君は休日らしい。

毎日休日みたいな暮らしをしてるが。羨ましい。

ナスビ君はテレビのリモコンを真っ二つに折り、テーブルをひっくり返して壁に穴を開けた。

「あー!ポケ○ンになりてぇ!!」

そしてベッドに寝転がって、家に第8巻しかないNAR○TOの単行本を読み始めた。

「まてまてまてぇーっい!!!!」

突然ドアを蹴破って変な生物が部屋に入ってきた。

その後4分間単行本を読みふけっていたナスビ君だったが、一度単行本を閉じて溜め息をし、その生物の方を見た。

「うわぁ!ビックリしたぁ!」

「いや!リアクション遅ぇから!!」

謎の生物がツッコミをいれる。

彼の名はアルマ次郎。ネーミングセンスの無さはともかくとして、見た目はアルマジロのような生物である。

全身茶色っぽいような橙色っぽいような色合いで、身長は100cmちょっと。小学生のような風格である。

ナスビ君の大親友であり、人間世界でひっそり暮らす生命体仲間である。

「お前今何時か言ってみろ!!」

「一昨日視点だと深夜55時かな」

「なんで一昨日視点だ!抜け出せ!もう2日経過してんだからいい加減その日から出ろ!!」

アルマ次郎はナスビ君を正座させようとしたが、殴られて逆に正座させられてしまった。

「いやあのねナスビ君…君さ、僕との約束覚えてる?」

流血しながらナスビ君へ問いかける。

「え?今日の朝5時に荻窪駅に集合して朝イチで夢の国に行こうって話?」

ナスビ君はけろっとしている。蛇なのに。

「覚えてた上で来ないとか、たち悪すぎだろ…」

アルマ次郎はその場で脱力し、仰向けになって天井を仰いだ。

「いや、言ったじゃん…今日限定のイベントあるから、朝イチで行こうって言ったじゃん…」

アルマ次郎は若干涙目だ。

そんなアルマ次郎を横目に、ナスビ君はダン○ボで遊び始めた。

「おいこのクソ蛇野郎!聞けや!!」

アルマ次郎は普段温厚で、絶対に怒るようなことはない。

以前、雑草引きちぎり選手権を一緒に見に行こうとナスビ君と約束し、集合時間になっても現れなかった。結果的に1ヶ月以上遅刻という意味の分からない単位で現れたこともある(一応来たけど、ナスビ君はたまたま買い物で通りかかっただけ)が、アルマ次郎は怒ることはなかった。

そんなアルマ次郎がブチギレたのだ。非常にヤバイ。普段怒らねぇやつがキレるのが一番ヤバイとよく聞くが、まぁ普段怒るやつがキレても怖いよね。

しかし、ナスビ君はにこやかだ。

そして、こう告げた。

「ふふふ…アルマ次郎、夢の国の開園時間は何時だい?」

「え?8時だよ…もう間に合わないよクソ蛇野郎…ころっぞ…」

怒り心頭のアルマ次郎。今にもナスビ君にタックルしそうな勢いだ。

「ふふふ…聞くんだアルマ次郎…!」

「あ"ぁ"?」

荒れるアルマ次郎と、余裕な態度のナスビ君。

「実は僕ね…瞬間移動ができるようになったんだ…!」

ナスビ君は北京ダックを食べ始めた。

「はぁ…?瞬間移動…?なめとんのかワレ?おぉ?いてこましたるでホンマ」

アルマ次郎も北京ダックを食べ始めた。

「んなもん信じられるか!やれるもんならやってみろや!!」

アルマ次郎が怒号を飛ばす。

「分かったよアルマ野郎!」

「一文字違うぞ!!」

するとナスビ君はアルマ次郎を掴んで頭の上で回し始めた。

「あばばばばばばばばばば!なにしてくれるんスか…この…あ…」

生命の灯火が消えようとしている。

「瞬間移動の儀式だよねー!生きるか死ぬか一か八かの賭けだよ!」

「いや!そんな危険な賭けに出るなら最初から普通に来いよアアアアア」

気が付くとアルマ次郎はお花畑にいた。

「瞬間移動成功だよね」

「大失敗じゃボケ!!死んどるやないかコレ!つーかなんでお前までいるんだよ!!」

アルマ次郎は自分の声が反響するのを感じた。

「ん?なんだココ?広い花畑かと思ったけど、よくみたら密室だな」

足元に花が敷き詰められてるが、遠くに見えた花畑や空は壁に描かれたイラストであった。

ナスビ君はニヤリとした。

「だから言ったじゃん、瞬間移動成功って…!」

アルマ次郎はハッとした。

今日行われる夢の国のイベントが"花"にまつわる内容だと思い出したのだ。

次の瞬間、壁に描かれたイラストの一部が動き出した。

どうやら扉があったらしく、何者かが開けようとしているようだ。

「あぁなんてことだ!僕たちは"夢の国"に辿り着いていたのか!!」

そして扉が開かれた。

輝かしい夢の国への入口だ!

「お待たせしましたお客様~!早速お部屋へご案内致しま~す!」

ドアを開けたのはスタッフと思われる男性。

しかし、夢の国にはなさそうなユニフォームを着用している。そして夢の国であるのに"お部屋"とは一体…?

その男性に連れられて部屋を出ると、そこは何かの受け付け。カウンター内に先ほどのスタッフと同じ格好をした男性が立っている。

「いらっしゃいませお客様、本日はどのようなコースにされますか?」

アルマ次郎は首を傾げる。なにか違和感を覚えたようだ。そしてナスビ君を見て、話し出した。

「…ねぇ、ナスビ君、まさかコレって…」

少し暗い室内、伸びる廊下には扉がいくつもあり、少し昔のカラオケボックスのよう。

だがココはカラオケなどではない。

そう、ココは夢の国。

ただし、大人が楽しむ夢の国である。

「どうぞお客様、夢の国で天国に昇るような一時をお過ごし下さい」

なんとココは"ソー○ランド 夢の国(ネヴァーランド)"だったのだ!

 完全に夢違いだし、ランド違いである。

そんな世界に来てしまった二人。

アルマ次郎の怒りが頂点に達することは想像に難しくない。

「ナスビ君…ねぇナスビ君…」

アルマ次郎が震えている。

とんでもなくお怒りだ。爆発しそう。

そして、大声でこう叫んだ。

「最高じゃねぇか!!!!!!!!」

…ん?なに?ん?

「通常価格に対してこの大特価!!オプションサービスも充実してるし、なによりタダで○○○が○○○れ○のが素晴らしい!!!!!!」

後半ヤバイ単語を平然と叫ぶアルマ次郎。

実は彼、とんでもない性欲オバケだったのだ。

欲を満たす為なら彼はあらゆる行動を辞さない。

「いやー、本当に素晴らしいイベントだ…夢の国最高…」

どうやらアルマ次郎が言っていた夢の国とはココのことだったようだ。

…ということはなにか?

コイツ朝5時の荻窪駅に集まってソー○ランドに朝イチで突入しようとしたのか?どんなガチ勢だよ。

「おらナスビ君!お前もコレで楽しめや!」

アルマ次郎はナスビ君に諭吉を5人程握りしめさせ、そのまま奥の部屋に消えていった。

「あ、お客様はどのコースにされます?」

カウンタースタッフがナスビ君に問いかける。

「あ、いや僕は送迎係なので大丈夫ッス」

そう言って夢の国を後にしたナスビ君。

彼には性欲と呼べるようなものは存在しない。

その昔、無知だったナスビ君はアルマ次郎から偏見の強い性的な知識を教わり、女性恐怖症になってしまったという。

だからナスビ君は女性に対するバイオレンス行為は行わない。

後が怖いからだ。

「僕はアルマ次郎が幸せなら、それでいいよ」

そう語ったナスビ君はどこか寂しげだった。

12秒後、ナスビ君は夢の国を爆破した。

そして、たまたま歩いてた白馬を改造してF-1カーにし、そのまま近くのビルに突っ込んだ。

F-1カーを放置して、たまたま歩いてたバッファローを改造して新幹線に仕立てあげた。

新幹線に火を放ったナスビ君は、たまたま歩いてたアリゲーターガーを改造して中央総武線の車両を作り上げた。20両。

そのまま自宅まで瞬間移動したナスビ君は、隣の家にビームを放った勢いで眠りにつこうとした。

目が冴えて全く寝れなかったナスビ君は、頭に思い浮かんだ知人の眠気を遠距離からすいとる能力を発動し、そのまま眠った。

素晴らしい1日だったと、45年後に思うナスビ君であった。

 

続く